前記事で『採用されるポイント』『入りやすい大学』について整理しました。
本記事は続編として『採用された人の傾向』についてまとめます。前記事を読んでから本記事をご覧になられるとスムーズです。
私は大学4年から3年間、特別共同利用研究員としてJAXAに通っていました。
その中で多くのJAXA職員と話をして『採用される必然性』を感じる機会がありました。その時の気づきを記事にし、皆さんの『想い』を実現する手助けとなり、将来の宇宙開発の発展に貢献できたらと考えています。
採用された人の傾向
高い専門性だけでなく、3つの共通する特徴があるように感じます。
素直 諦めない 強い探究心
これらが圧倒的に高いです。JAXAで養われたというよりは採用される前から備えている人間性かと思います。どのようにして身につけられたかは説明できませんが、そのように感じさせるストーリーを紹介します。
素直
ある職員とアンテナを試作していた時のことです。
外部に公開するイベントをマイルストーンにしていたため、試作品を完成させるまでに残された時間は限られていました。計画を立てて着手するのですが、猶予がないため一日の検討遅れは致命的な状況です。
そうした中で、シミュレーションを活用した詳細設計を行い、設計図から自らアンテナを試作して評価を進めました。初めは所望の結果は得られなかったのですが、何度か試作・検証を繰り返して期待する特性を得ることが出来ました。
それを上司へ報告したところ、
「特性を満たせたことは良かった。けど、このデータなんか違和感があるんだよな。この設計ならもっと良い特性が得られるはずだよ。ああして、こうして試してみてくれないか。」
目指した特性を満たため、終わりだと思ってホッとしていた私は唖然としましたが、隣の職員は即答でした。
「わかりました。試してみます」
実験室に戻る時、猶予がないのになぜ交渉せずに二つ返事で了承したのか聞いてみました。職員は教えてくれました。
「一回の報告でパスすことなんて基本ないよ。それに、〇〇さん(上司)には僕らには見えてないものが見えてるかもしれない。その指摘で改善するのであれば、そこから学ぶことは多いだろ。時間は自分で作るものだし、やってみようよ。」
簡単に言うけど、この人凄いなと思いました。この素直な考え方が人を成長させ、技術力を養うことになるんだと感じました。
諦めない
電子回路で期待する特性が得られない時の話です。
職員とペアで回路検討を実施していましたが、前例に従って何度か試しても狙った特性が得られませんでした。そこで初めに立ち戻って、基本から考え直して原因を考察することにしました。
議論は白熱し、外が暗くなる頃に原因と推定される項目が複数ピックアップされました。検証は明日かなと思っていたのですが、
『「明日やろうは馬鹿野郎」だからね。ちょっと今日は遅くなっちゃうけど、試してみようよ。』
と促されてしまいました。ドラマのフレーズをさらっと言えることに少し痒い気持ちになりましたが、確かに今日できることを明日に回すなという精神は大事だなと思わせてくれました。
実際、その日にやったことでは成果は得られなかったのですが、諦めずとことんやるという姿勢は重要だと刻ませてもらった経験です。
このような考え方は、学生時代に自分を追い込む運動経験をしてきた職員に多く見られるような気がします。陸上やサイクリングは自分を追い込むほどゴールでの達成感は大きくなります。その感覚を知っているからこそ、キツイ状況でもゴールを目指すことを当然と考え、未知なる宇宙を追求し続けることが出来るのかなと感じます。
強い探究心
『小惑星にどんな物質があるか気にならない?』
この言葉にJAXA職員の考えの根幹があるなと感じた時の話です。
はやぶさ帰還の余韻が残る頃、はやぶさ2に向けた準備がJAXA内部では着々と進められていました。はやぶさ2には若い職員もアサインされており、私の周辺からも数人参画することになりました。
当時の私は『社会でどのように働きたいか』を考えていたため、探査機中心の働き方についてどのように考えているのか職員に聞いてみました。
『探査機運用に携わると深夜出勤することもあり、家族と違う生活リズムになることは気にならないですか?』
帰ってきた返答はシンプルでした。
『あまり考えたことなかったな。小惑星にどんな物質があるか気にならない?それが知りたいし、自分の力で知るチャンスを手繰り寄せれる仕事に就けているから幸せだよ。』
仕事を決めるには夢や思いだけでなく、多方面から自分との相性を分析するべきだと思っていた私には衝撃でした。「小惑星にどんな物質があるか気になる」という自分の知りたい欲求を素直に追求する姿に強い探究心を感じました。
この話に限らず、純粋に未知を開拓して新しい世界を楽しんでいる人が多いと感じます。そんな人たちの集団なのではないでしょうか。
無事にはやぶさ2は小惑星リュウグウのサンプル採取に成功していますので、帰還にも成功し、念願のサンプル分析が出来ると信じています。
まとめ
『採用された人の傾向』を3つの具体例を通して紹介させて頂きました。あくまで私の主観によるものなので採用条件ではありません。ただし、この人間性を意識して日々生活しているとJAXAとの距離は近づいてくるのではないかと思います。最後にもう一度ポイントを復習しましょう。
素直 諦めない 強い探究心
JAXAに入社したいと思ってから、就職活動まで時間はあまりないはずです。残された時間を有意義に使って、ぜひ夢を実現してください。